編集部より
この記事の信頼性について: 編集部では、読書習慣がなかった20代・30代のメンバーが実際に読了できた作品を中心に選定しています。各作品のレビューは、活字が苦手だったスタッフの実体験と、書店員・読書指導の専門家への取材をもとに構成しています。ページ数や読了時間の目安は、読書初心者が実際に計測したデータに基づいています。
「本を読みたいとは思っている。でも続かない。」
この悩みを持つ人は、想像以上に多くいます。文化庁の調査によれば、1か月に1冊も本を読まない人は全体の約半数。読書習慣がないことは、決して珍しいことではありません。
問題は「意志が弱い」ことではなく、「最初の1冊の選び方」にあります。分厚い名作を手に取り、3日で挫折し、「やっぱり自分には読書は向いていない」と結論づける。このパターンを繰り返している人が大半です。
この記事では、活字が苦手でも確実に読み切れる10冊を、段階別に紹介します。さらに、読書習慣を無理なく定着させるための実践的なコツも解説します。
最初のゴールは「1冊読み切る成功体験」です。ここから始めましょう。
読書習慣をつけるコツ(実践ガイド)
本の紹介に入る前に、読書習慣を定着させるための基本戦略を整理します。どんなに良い本を選んでも、読み方の設計が間違っていれば続きません。
1日5分から始める
読書習慣がない人がやりがちな失敗は、「毎日1時間読もう」と高い目標を設定することです。最初の数日は気合いで続きますが、忙しい日が1日入ると途切れ、そのまま再開できなくなります。
最初の目標は「1日5分」で十分です。5分なら、寝る前のスマホ時間を少し削るだけで確保できます。5分を7日間続けたほうが、1日1時間を2日で終わるより、はるかに習慣として定着します。
時間帯を固定する
習慣化の研究では、「いつやるか」を決めることが継続の最大の要因とされています。おすすめは以下の3つのタイミングです。
- 朝の通勤時間:電車やバスでスマホを開く代わりに本を開く
- 昼休みの最後の10分:食事の後、仕事に戻る前の切り替えとして
- 就寝前の15分:スマホのブルーライトを避け、入眠の質も上がる
どの時間帯でも構いません。大切なのは「この時間に読む」と決めて、例外を作らないことです。
読みかけで止めてもいい
「最後まで読まなければ」というプレッシャーは、読書を義務に変えます。合わないと感じた本は、途中で閉じて構いません。読書家の多くは、実は何冊も途中で止めています。合わない本を我慢して読むより、次の1冊に切り替えるほうが、習慣としては正解です。
ページ数で本を選ぶ
読書初心者には、150〜250ページの本がもっとも適しています。1日10分のペースで読めば、2週間前後で読了できます。「2週間で1冊読めた」という成功体験が、次の1冊への動機になります。
この記事で紹介する10冊は、すべて300ページ以下の作品です。
読書記録をつける
読んだ本のタイトルと日付をメモするだけで、達成感が可視化されます。アプリでもノートでも構いません。シンプルなリストで十分です。感想を書く必要はありません。「読んだ」という事実だけを記録してください。
活字が苦手でも読みやすい5冊
まずは、読書経験がほぼゼロの人でも読み切れる5冊を紹介します。選定基準は以下の3点です。
- ページ数が少ない(250ページ以下)
- 文章がシンプルで、会話が多い
- ストーリーの展開が早く、先が気になる構成
『コンビニ人間』村田沙耶香
コンビニ人間
村田沙耶香
・出版:文藝春秋(文春文庫)、2018年刊、約160ページ ・読了時間の目安:約2〜3時間(1日10分で約2週間)
コンビニのアルバイトを18年間続ける36歳の女性・古倉恵子。「普通」の枠に入らない彼女の視点から、社会の同調圧力を淡々と描く作品です。
この本が読書初心者に向いている最大の理由は、その短さと読みやすさです。160ページという薄さは文庫本の中でもトップクラスに短く、文章は平易で装飾が少ない。一文が短く、会話のテンポが良いため、活字に慣れていない人でもリズムよく読み進められます。
さらに、コンビニという誰もが知っている場所が舞台なので、想像力に負荷がかかりません。SF的な世界観を理解する必要もなく、歴史の前提知識も不要です。「この主人公、どうなるんだろう」という素朴な興味だけで最後まで読めます。
芥川賞受賞作でありながら、読書初心者にもっとも薦めやすい1冊です。
- 160ページという圧倒的な短さ
- 一文が短く、会話中心のテンポの良い文体
- コンビニという身近な舞台設定
- 「普通とは何か」を考えさせる深いテーマ
著者情報: 村田沙耶香は2003年に群像新人文学賞を受賞しデビュー。2016年に『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞を受賞しました。コンビニでのアルバイト経験を活かしたリアルな描写が特徴で、現代社会の「普通」を問い続ける作家として国内外で高い評価を得ています。本作は30以上の言語に翻訳されています。
読者の評価: 読書初心者からの支持が特に高く、「初めて1冊読み切れた」という声が多数。Amazonレビューでは「あっという間に読めた」「読書嫌いだったのにハマった」といったコメントが目立ちます。読書習慣がない人への最初の1冊として、書店員からも頻繁に推薦される作品です。
こんな方におすすめ: 読書経験がほぼゼロで、まず「1冊読み切る」体験をしたい方。短い本から始めたい方。日常が舞台の話が好きな方。
『火花』又吉直樹
火花
又吉直樹
・出版:文藝春秋(文春文庫)、2017年刊、約160ページ ・読了時間の目安:約2〜3時間(1日10分で約2週間)
売れないお笑い芸人・徳永が、才能あふれる先輩芸人・神谷と出会い、笑いと人生について深く考えていく物語です。
お笑い芸人・又吉直樹が書いたという話題性だけでなく、作品としての完成度が高い1冊です。160ページと短く、場面ごとの区切りが明確で、中断と再開がしやすい構造になっています。
芸人の世界という非日常的な題材ですが、「夢を追うことと現実のギャップ」「才能と努力の関係」といった普遍的なテーマが根底にあり、どんな立場の人にも響く内容です。文章には独特のリズムがあり、又吉氏の観察力から生まれる比喩表現が光ります。ただし、比喩が難解になる箇所はほぼなく、読みやすさは保たれています。
- 160ページの短さで読了しやすい
- お笑いの世界という興味を引く題材
- 夢と現実のギャップという共感しやすいテーマ
- 芥川賞受賞の話題性が読むモチベーションになる
著者情報: 又吉直樹はお笑いコンビ「ピース」のメンバーであり、2015年に『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。お笑い芸人による初の芥川賞受賞として大きな話題となりました。太宰治や中村文則など純文学を愛読する読書家としても知られ、本の魅力を伝える活動も精力的に行っています。
読者の評価: 累計発行部数は300万部を超え、Netflixでドラマ化もされました。「芸人の本だと思って軽く読み始めたら、文学だった」という声が多く、読書のきっかけとして非常に有効な1冊です。普段本を読まない層からの評価が特に高い作品です。
『世界から猫が消えたなら』川村元気
世界から猫が消えたなら
川村元気
・出版:マガジンハウス(小学館文庫)、2014年刊、約200ページ ・読了時間の目安:約3〜4時間(1日10分で約3週間)
余命わずかと宣告された30歳の郵便配達員のもとに、悪魔が現れます。「世界からひとつ何かを消すたびに、1日寿命が延びる」という取引を持ちかけられた主人公は、電話、映画、時計、猫と、身の回りのものを消していく中で、本当に大切なものに気づいていきます。
この本の最大の魅力は、章ごとに「何かがひとつ消える」という明確な構造です。次は何が消えるのか、消えたらどうなるのか。この仕掛けが「先を読みたい」という動機を自然に生み出します。読書初心者にとって、この「ページをめくる理由がある」状態は非常に重要です。
文章は映画プロデューサーらしく映像的で、情景が頭の中に浮かびやすい書き方です。難しい言い回しはほぼなく、一文も短め。200ページという手頃な分量も、初心者にはちょうど良い長さです。
- 「何かが消える」という興味を引く構造
- 映像的でイメージしやすい文章
- 200ページという適切な分量
- 「本当に大切なもの」を考えさせられる読後感
こんな方におすすめ: 泣ける本を探している方。猫が好きな方。映画やドラマを見る感覚で本を読みたい方。
『カラフル』森絵都
カラフル
森絵都
・出版:文藝春秋(文春文庫)、2007年刊、約210ページ ・読了時間の目安:約3〜4時間(1日10分で約3週間)
死んだはずの「ぼく」の魂が、自殺した中学3年生・小林真の体に入り、期限つきで人生をやり直す。真の家族、友人、いじめ、恋。他人の人生を生きながら、「ぼく」は世界の見え方が少しずつ変わっていくことに気づきます。
もともと児童文学として書かれた作品ですが、大人が読んでも十分に響く深さがあります。児童文学ならではの平明な言葉遣いが、読書初心者にとっては最大のメリットです。難しい漢字や専門用語はほぼ登場せず、中学生でも理解できる文章レベルで書かれています。
物語のテンポが良く、主人公が真の人生の謎を解き明かしていくミステリー的な要素もあるため、飽きることなく読み進められます。最後のどんでん返しには、多くの読者が心を動かされています。
- 児童文学由来の読みやすい文章
- ミステリー要素があり先が気になる
- 210ページという手頃な長さ
- 価値観が広がるテーマ性
著者情報: 森絵都は1990年に講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『カラフル』で1999年に産経児童出版文化賞を受賞し、2006年には『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞しています。児童文学から一般文学まで幅広く手がけ、年齢を問わず読める作品を多く生み出している作家です。
読者の評価: アニメ映画化もされ、世代を超えて愛される作品です。「中学生のときに読んで、大人になって読み返したら違う感動があった」という声が多く、読むタイミングによって異なる味わいがある作品です。読書感想文の定番としても知られ、「初めて最後まで読めた本」として挙げる人が多い1冊です。
『君の膵臓をたべたい』住野よる
君の膵臓をたべたい
住野よる
・出版:双葉社(双葉文庫)、2017年刊、約250ページ ・読了時間の目安:約4〜5時間(1日15分で約3週間)
クラスメイトの山内桜良が膵臓の病気で余命わずかであることを偶然知った「僕」。正反対の性格の二人が、残された時間の中で少しずつ心を通わせていく物語です。
タイトルのインパクトが強く、「どういう意味だろう」という疑問が最初の読書動機になります。このタイトルの意味が明かされるラストまで、読者は自然と引き込まれていきます。
文章は現代の若者言葉に近い語り口で、堅苦しさがまったくありません。LINEのやりとりが物語に組み込まれている場面もあり、SNS世代にとっては馴染みやすい構成です。250ページとやや長めですが、テンポが良く、実際の体感時間は短く感じるでしょう。
泣ける本として知られていますが、単なる「お涙頂戴」ではなく、人と人のつながりの意味を問いかける作品です。読了後に「読んでよかった」と感じやすく、次の本を読む意欲につながります。
- タイトルの謎が読む動機になる
- LINEのやりとりなど現代的な表現
- 泣ける読後感が「読書っていいな」につながる
- 映画化されており、事前知識がある人も多い
読者の評価: 累計300万部を超えるベストセラーで、映画化・アニメ化もされています。「タイトルが気になって読み始めたら止まらなかった」「初めて本で泣いた」という声が非常に多く、読書のきっかけとして強力な作品です。
こんな方におすすめ: 感動する話が好きな方。映画を先に観て気に入った方。恋愛要素のある話を読みたい方。
もう少し挑戦したい人向け5冊
最初の5冊で「1冊読み切る」体験ができたら、次のステップに進みましょう。ここで紹介する5冊は、ページ数がやや増え、文章の密度も上がりますが、物語の力で最後まで引っ張ってくれる作品ばかりです。
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
夜
赤川次郎
・出版:角川書店(角川文庫)、2008年刊、約270ページ ・読了時間の目安:約5〜6時間(1日15分で約4週間)
京都を舞台に、「黒髪の乙女」を追いかける大学生「先輩」の恋の奮闘記。一夜の冒険が、古本市、学園祭、そして不思議な風邪の流行へとつながっていく、めくるめくファンタジー作品です。
森見登美彦の文章は、初めて触れると独特に感じるかもしれません。古風でユーモラスな語り口は、現代小説の中では異質です。しかし、この「クセのある文体」にハマると、読書の楽しみが一段階広がります。
「活字にはリズムがある」「文章そのものが面白い」という感覚を初めて体験できる作品です。ストーリーも奇想天外で楽しく、章ごとに独立したエピソードがあるため、少しずつ読み進めやすい構造です。
アニメ映画化もされており、映像を先に見てから原作を読むというアプローチも有効です。
- 独特の文体で「文章を味わう」体験ができる
- 京都の街並みを舞台にした魅力的な世界観
- 章ごとにエピソードが独立し、区切りやすい
- ユーモアがあり、堅苦しくない
著者情報: 森見登美彦は2003年に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。京都大学出身で、京都を舞台にした独特のユーモア溢れる作品を多数発表しています。『夜は短し歩けよ乙女』は2007年に本屋大賞2位を獲得し、山本周五郎賞を受賞。2017年にアニメ映画化され、幅広い層に支持されています。
読者の評価: 「最初は文体に戸惑ったけど、慣れたら抜け出せなくなった」という声が多い作品です。独特の語り口に馴染めるかどうかが分かれ目ですが、ハマった場合の読書体験の質は非常に高く、「読書の楽しみ方が変わった」というレビューが目立ちます。
『本日は、お日柄もよく』原田マハ
・出版:徳間書店(徳間文庫)、2013年刊、約280ページ ・読了時間の目安:約5〜7時間(1日15分で約4週間)
OLのこと葉は、幼なじみの結婚式で聞いたスピーチに心を打たれ、伝説のスピーチライター・久遠久美に弟子入りします。「言葉の力」を武器に、政治の世界にまで足を踏み入れていく成長物語です。
この本は「言葉」をテーマにしており、作中に登場するスピーチの一節一節が印象的です。読んでいるうちに、言葉の持つ力に引き込まれ、自然とページが進みます。
主人公が成長していくストーリーはわかりやすく、感情移入しやすい構成です。恋愛要素もあり、お仕事小説としての面白さもあり、複数の楽しみ方ができます。280ページとやや長めですが、テンポの良い展開で体感時間は短いです。
「言葉を扱う仕事」に興味がある人はもちろん、プレゼンやスピーチの機会がある社会人にも実用的な気づきを与えてくれる1冊です。
- 「言葉の力」という普遍的なテーマ
- お仕事小説として実用的な学びもある
- 恋愛要素もあり、多角的に楽しめる
- 主人公の成長に伴走する読書体験
こんな方におすすめ: 仕事に活かせる本を読みたい方。言葉や文章に興味がある方。女性主人公の成長物語が好きな方。
『ツナグ』辻村深月
ツナグ
辻村深月
・出版:新潮社(新潮文庫)、2012年刊、約280ページ ・読了時間の目安:約5〜7時間(1日15分で約4週間)
死者と生者を一度だけ会わせることができる「使者(ツナグ)」。依頼人たちはそれぞれの事情を抱え、亡くなった人との再会を望みます。母親、親友、恋人、アイドル——会いたい相手は様々ですが、再会がもたらすものは、必ずしも救いだけではありません。
この本の読みやすさは、連作短編という構成にあります。1章ごとに異なる依頼人の物語が完結するため、1章読むごとに達成感があります。「今日は1章だけ」という読み方が可能で、読書ペースを自分でコントロールしやすい構造です。
各章は独立していますが、全体を通して「使者」を務める高校生・歩美の成長が縦軸として通っています。すべての章を読み終えたとき、バラバラだった物語がひとつにつながる構成は、長編小説ならではの醍醐味を味わわせてくれます。
- 連作短編形式で1章ごとに区切りやすい
- 「死者に会える」という引きの強い設定
- 各章で異なるテーマの感動がある
- 全体を読み通したときの満足感が大きい
著者情報: 辻村深月は2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2012年に『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞しています。ミステリーから青春小説まで幅広いジャンルを手がけ、登場人物の心理描写に定評があります。『ツナグ』は映画化もされ、続編『ツナグ 想い人の心得』も刊行されています。
読者の評価: 「1章ごとに泣けた」「短編なのに、通して読むと長編の感動がある」という声が多い作品です。読書初心者からは「章ごとに読めるから続けやすかった」という評価が目立ちます。映画版を先に見てから原作に進む読者も多くいます。
『博士の愛した数式』小川洋子
博士の愛した数式
小川洋子 / くりた陸
・出版:新潮社(新潮文庫)、2005年刊、約250ページ ・読了時間の目安:約4〜6時間(1日15分で約3週間)
交通事故の後遺症で、記憶が80分しかもたない元数学者「博士」。彼のもとに通う家政婦の「私」と、息子の「ルート」。毎朝初対面から始まる関係の中で、三人は数式を通じて静かな絆を育んでいきます。
「数学」と聞くと構えてしまうかもしれませんが、心配は不要です。この作品の数式は物語を彩る詩のような存在で、数学の知識がなくても美しさを感じ取れるように書かれています。むしろ、「数学ってこんなに美しいものなのか」という新鮮な驚きが待っています。
小川洋子の文章は、日本語の美しさを静かに味わえる丁寧な筆致です。派手な展開はありませんが、ゆったりとした時間の流れに身を委ねる心地よさがあります。読書の楽しみとして「文章の美しさを味わう」という新しい軸を発見できる作品です。
250ページという分量は、この段階の読者にとってちょうど良い挑戦です。
- 数学の知識不要、数式が詩のように美しい
- 静かで穏やかな読み心地
- 日本語の美しさを味わえる丁寧な文章
- 心温まる読後感
著者情報: 小川洋子は1988年に『揚羽蝶が壊れる時』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1991年に『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』は2004年に本屋大賞第1回の受賞作となり、読売文学賞も受賞しています。繊細で美しい文体で知られ、国際的にも高い評価を受けている作家です。
読者の評価: 本屋大賞第1回受賞作として、書店員からの支持が非常に高い作品です。「静かだけど心に残る」「読書の楽しみ方が広がった」という声が多く、読書経験を重ねた後に再読する人も多い作品です。映画版(寺尾聰主演)も好評で、映像と原作を比較する楽しみもあります。
こんな方におすすめ: 静かな物語が好きな方。感動はしたいけど号泣するのは苦手な方。日本語の美しさを感じたい方。
『また、同じ夢を見ていた』住野よる
・出版:双葉社(双葉文庫)、2018年刊、約250ページ ・読了時間の目安:約4〜6時間(1日15分で約3週間)
賢くておませな小学生・奈ノ花は、学校に友達がいません。彼女は放課後に出会う3人の女性——手首に傷のある女子高生「南さん」、一人暮らしのOL「アバズレさん」、おばあちゃん——と交流しながら、国語の授業で出された「幸せとは何か」という課題に向き合っていきます。
『君の膵臓をたべたい』と同じ住野よるの作品ですが、こちらはファンタジー色が強く、寓話的な構造を持っています。3人の女性の正体が明かされるクライマックスには、多くの読者が涙します。
小学生の視点で語られるため、文章は非常にわかりやすく、活字への抵抗感が強い人でもスムーズに読み進められます。同時に、「幸せとは何か」というテーマは大人にこそ刺さる深さがあります。
物語の伏線が丁寧に張られており、すべてが回収されたときの感動は、読書を続ける大きなモチベーションになるでしょう。
- 小学生視点のわかりやすい文章
- 「幸せとは何か」という深いテーマ
- 伏線回収の見事さ
- 泣ける結末で読了後の満足感が高い
読書環境の整え方
良い本を選んでも、読む環境が整っていなければ習慣は続きません。ここでは、読書を日常に組み込むための具体的な環境づくりを紹介します。
本の置き場所を決める
本が見える場所にあるかどうかで、手に取る頻度は大きく変わります。カバンの中、枕元、ソファの横など、「読む場所の近く」に本を置く習慣をつけましょう。
棚に収納してしまうと、取り出す手間が心理的なハードルになります。読みかけの本は、読む場所に「出しっぱなし」にしておくのが正解です。
スマホとの距離を作る
読書の最大の敵はスマホです。本を開く前に、スマホを手の届かない場所に置く。これだけで、読書の集中力は劇的に変わります。
機内モードにする、別の部屋に置く、タイマーで通知をオフにする。方法は何でも構いません。「本を読んでいる間はスマホを触らない」というルールを、物理的に守れる環境を作ることが大切です。
電子書籍と紙の本の使い分け
どちらが良いかは好みの問題ですが、読書初心者には紙の本をおすすめします。理由は3つあります。
- ページをめくる物理的な動作が、読み進めている実感を与える
- 残りのページ量が目に見えるため、ゴールまでの距離がわかりやすい
- スマホの通知に邪魔されない環境を自然に作れる
一方、通勤時間に読みたい人や、暗い場所で読みたい人には電子書籍が向いています。Kindle Paperwhiteのような電子書籍専用端末は、スマホの通知が来ないため、集中しやすいという利点があります。
読む場所を決める
カフェ、図書館、自分の部屋の特定の椅子。読書する場所を決めておくと、その場所に座るだけで「読書モード」に切り替わりやすくなります。
特におすすめなのは図書館です。静かな環境が確保でき、無料で本を借りられるため、「買ったのに読まなかった」という罪悪感もありません。気になる本を図書館で借りて試し読みし、気に入ったら購入するというフローも効果的です。
読書仲間を見つける
一人で読書を続けるのは、想像以上に難しいものです。SNSの読書アカウント、読書会、友人との本の貸し借りなど、読書を共有できる相手がいると、継続率は上がります。
「この本どうだった?」と聞ける相手がいるだけで、本を読む動機は強くなります。読み終えた本の感想を誰かに話す体験は、次の1冊への最高の橋渡しです。
ステップアップガイド
10冊を読み終えた後、どう読書を広げていくかのロードマップを示します。
ステップ1:同じ著者の別作品を読む
気に入った作品があれば、その著者の別作品を読むのがもっとも自然なステップアップです。文体が馴染んでいるため、新しい作品でも入りやすく、「この著者のこの部分が好き」という自分の好みが明確になります。
例えば、以下のように広げられます。
- 『コンビニ人間』が気に入った → 村田沙耶香『地球星人』『殺人出産』
- 『火花』が気に入った → 又吉直樹『劇場』『人間』
- 『ツナグ』が気に入った → 辻村深月『傲慢と善良』『かがみの孤城』
- 『博士の愛した数式』が気に入った → 小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』『ミーナの行進』
- 『君の膵臓をたべたい』が気に入った → 住野よる『青くて痛くて脆い』『よるのばけもの』
ステップ2:ジャンルを固定して冊数を重ねる
好みのジャンルがわかったら、そのジャンル内で冊数を重ねましょう。泣ける小説が好きなら泣ける小説を、ミステリーが面白ければミステリーを、5〜10冊読んでみてください。
同じジャンルを読み続けると、作品同士の比較ができるようになり、読書の解像度が上がります。「あの作品とこの作品は似ているけど、ここが違う」という感覚が生まれたら、読書力が確実に育っている証拠です。
ステップ3:少しジャンルを広げる
ジャンル内で10冊ほど読んだら、隣接するジャンルに足を伸ばしてみましょう。
- 泣ける小説が好き → ヒューマンドラマ、家族小説
- ミステリーが好き → サスペンス、社会派小説
- ファンタジーが好き → SF、歴史小説
- 恋愛小説が好き → 青春小説、日常小説
ジャンルを広げることで、読書の世界は一気に広がります。ただし、無理に広げる必要はありません。好きなジャンルを深掘りし続けるのも、立派な読書生活です。
ステップ4:ページ数を増やす
200ページ前後の作品に慣れてきたら、300〜400ページの作品に挑戦してみましょう。この段階になれば、読書体力がついているため、長めの作品でも最後まで読み通せるはずです。
東野圭吾、伊坂幸太郎、湊かなえなどのエンタメ作家の作品は、300〜400ページ台でもテンポが良く、読書中級者へのステップアップに最適です。
ステップ5:古典や翻訳文学に触れる
読書に慣れてきたら、日本の古典文学や海外文学の翻訳にも手を出してみてください。夏目漱石『坊っちゃん』、太宰治『人間失格』、カミュ『異邦人』などは、名作でありながら比較的読みやすい作品です。
古典や翻訳文学は、現代の作品とは異なる視点や価値観に触れる機会を与えてくれます。読書の幅が広がるだけでなく、物事を多角的に考える力も養われます。
まとめ
読書習慣をつけるために必要なことは、3つだけです。
- 短くて読みやすい本を選ぶ:最初の1冊は150〜250ページで、文章がシンプルな作品を選ぶ
- 1日5分から始める:時間帯を固定し、毎日少しずつ読む習慣を作る
- 1冊読み切る成功体験を作る:最後まで読めた事実が、次の1冊への最大の動機になる
この記事で紹介した10冊は、いずれも読書初心者が実際に読み切れた実績のある作品です。
| 作品名 | 著者 | ページ数 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| コンビニ人間 | 村田沙耶香 | 約160p | ★☆☆ |
| 火花 | 又吉直樹 | 約160p | ★☆☆ |
| 世界から猫が消えたなら | 川村元気 | 約200p | ★☆☆ |
| カラフル | 森絵都 | 約210p | ★☆☆ |
| 君の膵臓をたべたい | 住野よる | 約250p | ★★☆ |
| 夜は短し歩けよ乙女 | 森見登美彦 | 約270p | ★★☆ |
| 本日は、お日柄もよく | 原田マハ | 約280p | ★★☆ |
| ツナグ | 辻村深月 | 約280p | ★★☆ |
| 博士の愛した数式 | 小川洋子 | 約250p | ★★☆ |
| また、同じ夢を見ていた | 住野よる | 約250p | ★★☆ |
まずは表の上から、気になった1冊を手に取ってみてください。「活字が苦手」「読書が続かない」という悩みは、合う本に出会えていなかっただけです。
あなたに合った1冊は、必ずあります。